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記者発表

インターロイキン6は静脈血栓融解を促進させることを発見

発表日時 2020年3月4日 11:00~11:20
場所 和歌山県立医科大学 生涯研修センター研修室(図書館棟 3階)
発表者 医学部法医学講座 教授 近藤稔和

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発表内容

概要

肺動脈血栓塞栓症は、心臓から肺に血液を送る肺動脈に血栓(けっせん)がつまるために起こります。血栓は主に下肢などの静脈内で血液が凝固して生じ、血液の流れに乗って肺に達します。大きな血栓が肺動脈を塞ぐと、酸素を取り込めなくなったり心臓から血液を押し出せなくなり、突然死の原因にもなることがあります。日本では1年間に人口100万人あたり62人発症するという報告があります。

血液は流れが停滞すると凝固して血栓ができやすくなります。航空機などで長時間座っていて下肢の血液が滞り、血栓が生じて発症する“エコノミークラス症候群”が有名です。また、大きな手術の後や重症な病気のため寝ている時間が長くなると発症しやすくなります。他にも遺伝、様々な疾患、薬剤、加齢などによって血栓が生じやすくなることがあります。

肺動脈血栓塞栓症の原因である静脈内で生じる血栓形成を抑制することが、肺動脈血栓塞栓症発症の予防につながります。今回我々は、炎症反応?免疫反応に関与するタンパク質であるインターロイキン6(Interleukin-6, IL-6)が,静脈内で生じた血栓の融解を促進させる作用があることを明らかにし、静脈血栓の新規治療法開発の可能性を示しました。

1. 背景

図1肺動脈血栓塞栓症とは、心臓から肺に血液を送る肺動脈に血栓(けっせん)いわれる血液の塊がつまるために起こる病気で、突然死の原因の一つで、欧米で多い疾患とされていました(図1)。近年、食生活の変化とともに日本でも増加傾向にあり、特にエコノミークラス症候群という名前でひろく知られるようになりました。また、地震等の被災者が車両内で避難生活をおくることでも、肺動脈血栓塞栓症が生じる危険性が高くなるなどの報道がなされています。肺動脈に詰まる血栓は、下肢などの静脈内で血液が凝固して生じ、血液の流れに乗って肺に到達し、この血栓が大きい場合は死に至ります。静脈内に血栓が生じやすくなる原因としては、肥満、脱水、長期の寝たきり、下肢の外傷、癌など様々です。

静脈内に血栓が生じることを防ぐことが、肺動脈血栓塞栓症の予防につながします。しかし、未だ有効な治療法は確立されていません。血栓の形成?融解にはさまざまな細胞が関与しており、我々は特にマクロファージと呼ばれている免疫細胞に着目し、それらが産生するタンパク質であるインターロイキン6(Interleukin-6, IL-6)が、静脈内で生じた血栓の融解を促進させる作用があることを明らかにしたので報告します。

2. 研究手法?成果

【研究手法】

野生型マウスと遺伝子操作によりインターロイキン6を欠損したマウスの下大静脈を結紮して静脈血栓形成を誘導し、その大きさを比較した(図2)。また、インターロイキン6を野生型マウスに投与して、血栓形成をコントロール群と比較した。

【成果】

図2野生型マウスとインターロイキン6欠損マウスで静脈血栓を比較検討したところ、下大静脈結紮3日目までは同程度の大きさの血栓が観察された。その後野生型マスでは、次第に血栓が小さくなる傾向を示したが、インターロイキン6欠損マウスで血栓の縮小傾向が減弱しており、下大静脈結紮後10日目では野生型マウスに比較して明らかに大きな血栓が観察された(図2)。また、インターロイキン6を投与した野生型マウスでは、インターロイキン6を投与しなかった野生型マウスと比較して血栓がさらに縮小していた。

図3マトリックスメタロプロテアーゼ(Matrix metalloproteinase,MMP)と呼ばれるタンパク質が血栓を直接的に融解することが知られている(線溶系物質)。野生型マウスに比較して、インターロイキン6遺伝子欠損マウスでは、MMP-2およびMMP-9の発現が明らかに減弱していた(図3)。さらに、インターロイキン6を発現しているマクロファージと呼ばれる免疫細胞にインターロイキン6を添加して培養したところ、MMP-2およびMMP-9の発現が増強したが、インターロイキン6を発現していないマクロファージではこの現象は認められなかった。

以上のことから、インターロイキン6が線溶系物質であるMMP-2およびMMP-9を誘導することで、血栓融解作用を有していることが明らかとなった。

3. 波及効果

インターロイキン6が血栓融解因子(MMP-2およびMMP-9)の発現に関与していることを明らかにした。これらのことから、今後インターロイキン6およびその情報伝達経路を分子標的とする新たな血栓融解療法の開発が期待される。

掲載誌

Crucial Involvement of IL-6 in Thrombus Resolution in Mice via Macrophage Recruitment and the Induction of Proteolytic Enzymes
Frontiers in Immunology

<用語解説>
肺動脈血栓塞栓症
深部静脈血栓が遊離して静脈血流によって肺に運ばれ、肺動脈を閉塞することにより呼吸循環障害を生ずる病態を肺血栓塞栓症という。日本ではエコノミークラス症候群として知られるようになった。

深部静脈血栓症
下肢および骨盤内などの深部静脈に血栓が生じた状態を深部静脈血栓症という。原因として肥満、脱水、長期の寝たきり、下肢の外傷、癌など様々である。我が国では、車内で避難生活をおくる災害等の被災者に高率に発症することが問題となっている。

インターロイキン6(Interleukin-6, IL-6)
インターロイキン6は、1986年にサイトカインと呼ばれるタンパク質の一つとして見出された。その後の研究により、IL-6は多彩な生物活性を有することが明らかとなっており、免疫反応、炎症反応、造血をはじめとする多様な生物学的事象に関与していることが示されている。一方、IL-6の過剰産生は、一部の慢性炎症生疾患やがんなどのさまざまな疾患の発症に関与していることが示唆されている。